やぶから九尾

東方SS書きのブログでございます

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

★自作SS紹介★ 作品集59 『千年鍛えし釣りの極意』 後日談

今回のSSは、東方創想話作品集59に投稿した『千年鍛えし釣りの極意』の後日談です。実は作品投稿後の一週間後には、すでにある程度形が出来上がってました。しかし投稿しようがないうえに完全に蛇足だったので、しばらくしまっておきました。それを、昨日から加筆修正したものを、この場でお届けいたします。


というわけで、以下の話は完全に蛇足でもあります。あの話のその後を、想像の中だけにとどめておきたいというお方は、以下を読まないことをおすすめします。それでも読んでみたいという勇者は続きをお読みください。そもそもそんなSS読んだことねーよ、という方。以下はネタバレが炸裂しているので、読まないでくだせぇ……(==;





 秋晴れの下、『妖怪の山』を歩く三人の姿があった。
 一人はもんぺ姿の蓬莱人、一人は特徴的な帽子をかぶった半獣人、残る一人は道服の背中から九つの尻尾を出した妖怪である。
 あまり、山に似つかわしい集団とは言い難い。この山に住んでいるのは、多くが河童と天狗であるわけだし、今の時期は涼しいとはいえ、山道は急で邪魔な草も多い。けれども、先頭を歩く蓬莱人は、視界の悪い山道にも慣れた様子であった。後続の二人も、特に足運びが乱れる様子はない。


「もう少し先へ行った所よ。たぶん、その前に呼び止められると思うけど」
「いや、むしろその方がいい。この人数で奥まで入ると警戒されるかもしれないからな」


 先を案内する藤原妹紅に、その後ろの上白沢慧音が同意した。二人の後ろを歩く、八雲藍の手には、お重箱を包んだ風呂敷がある。彼女らの目的は、そのお重の中身を、『ある妖怪』と四人で食べることなのであった。
 とそこで、藍がくだけた調子で、先を行く妹紅に話しかけた。


「そうだ。妹紅殿、今度釣りに行かないか?」
「ん? 橙を連れて?」
「いや、それもいいけど、二人で釣果を競うというのも面白い」
「ああ、それは腕が鳴……痛っ!」


 妹紅は途中で言葉を切って、頭を手で抑えた。
 急に頭を、誰かにぽかりとやられた感覚があったのだ。
 思わず後ろの慧音を見るが、彼女も不思議そうな顔付きであった。


「どうした、妹紅」
「いや……誰かに叩かれた気がして」
「それで何で私の方を見るんだお前は……」
「いやあ、なんとなく」
「件のお迎えじゃないかな」


 藍が茂みの向こうを指差した。
 確かに、姿は見えずとも、何者かの気配が感じられた。


「……だね。ちょっと行ってくるわ」
「では、我々はしばしここで待とう」
「うん。あ、これちょっと借りるわよ」


 慧音と藍を残して、妹紅はお重の一つを手に、茂みへと歩いていった。


 近くまで来ると、袖がぐいっと引っ張られた。


「ととと……はあい。昨日ぶり」
「……『昨日ぶり』、じゃないよ!」


 声をひそめて文句を言うのは……透明人間だった。

 
「信じられない人間だね! 何で一日と経たずにまた来るんだか!」
「ごめん。ちょっと事情があってね。あと、透明じゃ話しにくいんだけど」


 そこで透明人間のスーツの効果が消えていく。
 緑の帽子に大きなリュックサック、そして長い機械性の手は、握りこぶしの形をしている。
 昨日縁の下で大活躍をしていた、河城にとりだった。
 そして、その表情は、かなり怒っているようだった。


「それで、今度は何しに来たんだ」
「昨日のあの場所に行きたいんだけど。あんたを連れて」
「無理! 昨日は特例だったんだから、そう何度も許可できないよ! しかも何だって三人に増えてんのさ!」
「まあ、そこは置いといて」
「置くな!」


 その増えた二人に見つからないように、姿勢を低くしつつも、頭から湯気を出しながら、にとりはわめいた。


「上に怒られるのは私なんだ! 今日は会わなかったことにして帰ってよ!」
「いやだって、あんたに用があるのよ」
「知らん! 聞きたくない!」
「今日も美味しいのがあるよ」
「キュウリが何本あっても知らん!」
「まあ聞きなって、特製のかっぱ巻きが……」
「特製だろうとアルミ製だろうと関係ない!」
「昨日のあの子が握ってくれたの」


 そこでゼンマイが切れたように、暴れるにとりの動きが、ぴたりと停止した。


「イワナのお礼だって、私たちに握ってくれたのよ」
「………………」
「もっとも、あんたの仕業だと、橙は気づいてないけどね。で、食べたくない?」


 お重を開けて中身をみせつつ、妹紅は片目をつぶった。






 川原の石じゅうたんでは膝が痛いので、少し離れた柔らかい土の上に、大きめのござが敷かれた。その上に三つのお重が開けられた。現れたのは、かっぱ巻きと稲荷寿司。橙と藍が協力して握ったものであった。


 まだ紅葉には早いが、いくつかの木の葉は、すでに緑から黄へと移っている。ひらひらと落ちた一枚が、川のせせらぎに運ばれるようにして、風に乗って飛んできた。


「いい風景だな。魚を釣らずとも、楽しめる場所だ」

 
 慧音はその葉を指ではさんで受け止め、くるくると回して、満足げに言った。
 隣の妹紅も、稲荷寿司を片手に首肯した。


「でも、なんか変な感じだね。この面子でここで、くつろいでるなんて」
「確かに、事情を知らない者が見れば驚きそうね」

 
 藍もうなずいて、のり巻きを一つつまむ。
 そんなふうに、くつろいで談笑する三人だったが、


「…………」


 主役の一人である、にとりだけは、無言で、かっぱ巻きを口に運んでいた。


「なによ、まだ怒ってんの?」
「……怒ってはいないけど」


 にとりは、のり巻きを口に放り込み、自前のお猪口の中身で、一息に流し込む。
 ぷはあ、と吐いた息には、濁酒の香りが混じっていた。


「上司に見つかったりしたら大目玉だもん。気が気じゃないよ」
「一応隠行用の結界を張っている。まあ、見つかっても事情を話せばわかってくれると思うんじゃないかな。橙の主として、できるだけのことをするよ」
「やだよ、そんなこと話すなんて。仲間に絶対からかわれる」


 にとりの顔が朱色なのは、酔っているのが原因ではないらしい。
 しかし、もう一人の主役である妹紅は、少しだけ酔っていた。
 酒にではない。普段の自分には縁が無い、他人同士で集まっての和やかな雰囲気に、である。
 もしもこれが慧音のいつもの提案だったら、やはり妹紅は尻込みしていたかもしれない。しかし今回は、寿司を届けて一緒に食べるという目的に、自然な流れで向かうことができた。今はこの場に至っては、浮き立つ気持ちがあることを否定できない。
 妹紅はきっかけを作ってくれた橙に感謝しながら、稲荷寿司の一つをつまんだ。


「これは、五目稲荷かな」
「どうやらそのようだな。こちらのもそうだ。でも形は少し違うようだが」
「うん。こっちのは崩れてないけど、面白い形よね。橙が作ったの? それとも藍が?」




「ああ。それは紫様が作った」





 藍の一言によって、和やかな雰囲気が一瞬で凍った。
 三人が石化している。なぜか、川の音まで消えていた。





「いろいろあって、珍しく、今朝から起きていたんだ。さらに珍しいことに、寿司も握ってくださるということで、」
「……慧音。これあげる」
「……にとり殿。これはどうだ。美味しそうだ」
「……八雲藍だったよね。お近づきのしるしにどーぞ」
「いや、大丈夫だみんな。毒とかは入ってない。……と思うんだけど」


 妹紅の手から一周してやってきた稲荷を手に、藍は弁明した。
 しかし、三人の胡散臭げな視線は変わらない。不憫な主を思いつつ、藍もおっかなびっくりその寿司を食べた。味は普通だった。
 しばし、もぐもぐと咀嚼していると、


「あ」
「どうしたの?」
「橙がこっちにくる気配がする」
「げげっ」


 声をあげて慌てて逃げようとしたにとりが、妹紅につかまった。


「何で逃げるのさ」
「だって、会ったらまずいじゃないか!」
「まずくないわよ。橙はあんたの顔は知らないんだし」
「そ、そっか。それも何か複雑だけど」
「二人とも、来たぞ」


 慧音が顔を向けた川の向こう岸に、赤いスカートをはいた少女が姿を見せた。
 こちらに気がつき、手をぶんぶんと振りながら、


「藍様ー! 妹紅さーん!」

 
 と声をかけてくる。
 猫耳に二つの尻尾。藍の式であり、元気な妖怪娘である橙だった。
 妹紅はその姿に手を振りつつ、にとりに釘をさした。


「橙にはイワナのことは黙っておいてよ?」
「……う、うん。わかってる」


 にとりはまだ落ち着かない様子であった。
 橙は川を一跳びで越えて、四人の側に降りてきた。


「こんにちは妹紅さん! 昨日はお世話になりました!」
「どういたしまして」
「でも、どうして今日もここにいるんですか?」
「橙の作ってくれた寿司を皆で食べてたのよ」
「う、うまくできてましたか?」
「うん、美味しいよ」
「わあ、ありがとうございます!」

 
 妹紅の率直な感想に、橙は手を叩いて喜んだ。
 そこで、その主が軽く咳をした。


「あれ? 藍様風邪ですか?」
「橙ー、何か忘れてないかな」
「……あ! すみませんでした!」


 慌てて橙はまず、慧音に向かって一礼した。


「えと、こんにちは慧音さん」
「こんにちは橙。私もご馳走になっているよ。とても美味しい寿司だ」
「ありがとうございます! そして……えーと」


 橙は一人だけ知らない存在に向きなおった。
 河童は小さなしゃっくりをあげた。


「はじめまして! 八雲藍の式、橙です」
「い、いや、こちらこそ、はじめまして。河童の河城にとりです」


 にとりはぺこぺこと、敬語で挨拶を返した。
 その様子に、妹紅はニヤニヤしつつ紹介した。


「にとりはこの辺に住んでるのよ」
「妹紅さんのお友達ですか?」
「えーと、友達ー、でいいのかね、にとりさん」
「……いいよ。人間は河童の盟友だしね、もこうさん」
「そうだったんですか! 私昨日ここで釣りをしたんですよ」
「ああ、うん。……じゃなかった。へー、そうなんだ」
「はい! こーんなおっきなイワナを釣ったんです。すごく美味しかった!」
「そりゃそうだよ。何せ私の晩ご飯だっ……いてて!」
「はい?」
「や、やー! それは見たかったなー! アハハハハ」


 いささか大袈裟な笑いだった。
 橙は気がつかなかったが、にとりのお尻は、妹紅と藍にしっかりとつねられていたのである。


「それで、さっき私が魚を釣った話をしたら、みんなもやってみたいって言ってくれたんです」
「みんなというと、橙のお友達か」
「はい! でも私以外に……えーと、五人だから、釣竿が足りなくて」


 指で友人を数えてから、橙は主に向き直った。


「藍様。他にも釣竿ってありましたか? 私が藍様に借りたようなものがいいんですけど」
「えーと。蔵にはまだあったけど、あれは普通の竿だわね。釣りをしたことのない子らには、少々扱いにくいかな」
「そうですか。うーん、どうしようかなー」
「まあ、里の道具屋で仕入れて、私が術をかければ問題はないよ。あとで帰る前に少し寄って……」
「ちょっと待った二人とも」


 そこに口を挟んだのは妹紅だった。


「昔から、道具を作るといえば河童の右に出るものはいない、と聞いてるんだけど」
「うむ。私の記憶にもそうあるな」


 蓬莱人の思いつきを、知識たっぷりの半獣人が後押しする。


「確かに、河童の品なら信頼できる。良かったね橙」
「はい、藍様! 助かりました」


 妖怪の主と式も、笑顔になる。
 口をあんぐりとあけているのは、当の河童のにとりだった。
 慌てふためいて、


「『道具と聞けば黙っちゃいられない。その竿の件、私が引き受けよう。このにとりにお任せあれ』」
「ってそこ! 勝手に返事を捏造すんな!」


 妹紅を指差して、にとりは怒鳴った。


「いや、にとり殿。私からもお願いしたい。橙の願いは私の願いでもある。もちろん報酬もちゃんと支払うよ」
「ついでに、危険がないよう、これからは監督してもらうのはどうだろうか。子供の川遊びも、河童が見守ってくれるのなら安心だろう」
「ああ、それはありがたいわね。橙は水がだめだし、川の近くで遊ぶとなると、やはり心配だったから」
「そこの二人も何いってんの!」


 今度は保護者と教育者を指差して、にとりは怒鳴った。
 最後に橙が、立ち上がったにとりを見上げながら、


「お願いできますか、にとりさん!」
「だめ!」
「……え。だめ……ですか」
「うぐ……」
「……………………」
「いやその……」
「……………………」
「だから、えーと……」
「………………ひっく」
「だー、わかった! かっぱ巻きの礼もあるしね! くそう!」
「やったー! ありがとうございます!」


 邪心の無い、つぶらな瞳に見つめられてしまい、にとりは半ばやけくそで依頼を引き受けた。


「ただし! 今度は私は竿を作るだけ! その後のことは知らないよ!」
「え、その後のことってなんですか?」
「あ、いや。なんでもないです。アハハ」
「大丈夫。にとりは優しいから、最後まで面倒を見てくれるわよ」
「だから! 勝手なこといってんじゃなーい、そこの人間!」


 にとりがわめいても、妹紅の笑い声はやまなかった。
 やがてその笑いの輪は広まっていき、最後はにとりも根負けして苦笑することとなった。


 種族の垣根を越えた、お昼ご飯の一コマ。
 そんな幻想郷ならではの光景だったとさ。




(おしまい)
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

 

Author: 
 
このはずくは共通世界観、木葉梟は一度限りの世界観という風に、HNを使い分けて東方創想話にSSを投稿しています。
ここでは他の方々のSSや、自作SSの裏話などを紹介しております。あとは、軽い後日談とか。よろしくです。

最新記事

今日は何の日?教えて慧音先生

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。