やぶから九尾

東方SS書きのブログでございます

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

地下図書館の訪問者 1















 おや?





 おっと、逃げなくてもいいですよ。

 こんにちは、迷子さん。ようこそ、当図書館へ。



 え? ここに来た覚えがない? でも現実に、私の目の前にいらっしゃるじゃないですか。

 いえいえ実は、貴方のような人、珍しくないんですよ。 
 この地下図書館に迷い込む、外界の魂というのはね。
 
 ん? どういう意味ですって?
 まぁいいじゃないですか。どうぞ、くつろいでいってください。

 申し遅れましたが、私はこの図書館の司書を担当させていただいております。
 ここにある書物のことであれば、なんでもお聞きください。
 ああ、この頭のと背中のは、ただの飾りですよ。髪の色は地毛ですけど。怪しく思っちゃいましたか? 恐縮です。

 ふうむ、この棚の近くでお客様を見かけるのは珍しいですね。
 うちの図書館は魔導書が一番多いんですけど、この棚は主に物語が置かれてるんですよ。
 そして、外の世界の本でもあるんですよね。実は今も増え続けてるんです。

 よければ、一つ借りてみませんか?

 いえいえ、怪しいサービスではありません。
 普通の本じゃないですか。手に取ってみてください。

 どうです? 何も変わったところはないでしょう。

 え?
 ああ、数字が気になるんですか。これは単純に本に与えられた魔力量と純度を示しています。
 この図書館は、本を読む存在からいただいた魔力を餌にしていて……。

 わかりましたから、慌てないでください。逃げる必要もありません。第一そっちは出口じゃないです。

 きちんと順を追って説明します。この図書館は、ある種の妖怪なんです。
 ただし、意識らしい意識を持たず、喋ることもないし、人を食べたりもしません。
 では何をしているのかと言いますと、これらの圧倒的な数の蔵書を求めて迷い込んでくる人間の、魔力を食べて成長しているんですね。

 だから落ち着いてくださいな。
 え? 落ち着いてる? こほん。失礼しました。

 魔力といっても、命に関わることはほとんどないんですよ。だって貴方、ご自分の魔力を自覚したことはないでしょう。ほとんどの人間が、自分の魔力の増減に気付かずに歳を取って、気づかないまま土に帰っちゃうんですよ。まだたっぷり体に残してたっていうのにね。もったいない話じゃないですか。

 けどここにある本は、読むことによって、その人間から自動的に魔力が回収されるようにできています。
 それどころか、自覚してなかった人間であっても、意識的に魔力を与えることだってできちゃうんです。
 そういう魔力は本に数値として現れるんですよ。そうそう、さっき見せたその部分ですね。
 つまり、貴方は物語による快楽を手に入れ、当図書館は魔力を得る。
 交換条件としては妥当でしょう? もちろん本に魔力を全部取られて、魂まで奪われた者がいなかったわけじゃありませんが、その者達もまた、無限の快楽に浸ったと思えば。

 いやいや、貴方がそうなると言ったわけじゃないです。もちろん、ならないという保証もありませんが。
 まぁ大丈夫だと思いますよ。うん、たぶん。

 それよりどうぞ、面白そうだと思った本を手に取ってください。ここにある棚からなら、なおのこと嬉しいです。
 というのも、向こうにある魔導書もこちらの本も、同じように手入れをしないといけないので、いつも不満なんですよ。本棚って気づかないうちに、埃がたまっていきますからね。油断すると黴も生えてきますし。おおやだ。

 まぁ、あれらの本がパンや魚、あるいは野菜ならば、こちらはデザートに値しますからね。
 なくても生きていけるが、ないと生きてる甲斐がない。そんな本ばかりです。
 貴方は甘いものは好きですか? それともお嫌い?

 そうですか。それは結構です。
 確かに全部が全部、貴方にふさわしいとは申せません。
 人によって合う本もあれば、合わない本もあります。
 けれども、必ず一つはその人のお気に召す物が見つかってるんですよ。今までの経験からしてね。
 ちなみに私は、等しく本を愛しています。もちろん愛で方は本によって違いますけど。
 ああ、失礼。こちらの話です。ふふ。

 どうやら目移りしているようですね。
 じゃあ私が一つ選んで差し上げましょうか。これなんでいかがでしょう?
 まだここに入って、新しいものですよ。




棚番号154 『シンデレラロード・オブ・ザ・タイガー』 174.60頁




 ね? ちょっとそそられるタイトルでしょう?
 もちろんシンデレラはご存知ですよね。メルヘンで女の子も一度は憧れたくなる有名な童話です。
 この図書館にも最古のものがありますよ。そちらは中国が舞台になっておりますが。
 まぁその話は置いておいて、タイガーというと野性的な感じがしますよね。そしてシンデレラは宝石のようなイメージ。元は灰かぶりという意味なんですけど、普通の人が聞けば、かぼちゃの馬車とガラスの靴を思い浮かべるでしょう。

 異なる属性が組み合わさっていて、一目でわかるインパクトがあるタイトル。
 棚に戻してご覧ください。目立ちますよね?
 うちの本好きのご主人様に言わせれば、タイトルは作品の顔らしいですよ。作品の全てではないですが、決しておろそかにしてはいけない要素ということでしょうか。それとも、表情に騙されてはいけないってことかもしれませんけど。

 ここの本は厚みによって手に取ってもらえるかどうかが変わってくるので、こういう比較的長い話はやっぱり、いいお顔でお化粧してあげるのがいいかもしれませんね。もちろんこの作品のタイトルも素敵ですし、中身も決して期待を裏切らない内容ですよ。

 あらすじが聞きたいですか? それでは簡単に。






ある日の命蓮寺に、一通の手紙が届く。
それはなんと、舞踏会の招待状。ただし一枚につき、一人しかお呼ばれすることはできなかった。
というわけで、誰が赴くかを公平に投票で決めたところ、毘沙門天の弟子である、寅丸星が選ばれた。
けれども彼女はダンスの素人。それにドレスだって一着も持っていない。なのに期日はあと三日。
彼女の部下であるナズーリン、そして命蓮寺の楽しい仲間達は、星を淑女に仕立て上げるために奮闘するのだが……。






 いかかですか。
 見た目は厚いですが、本に慣れている人でなくとも、するすると読めるはずです。
 ストーリーは明快で、文章も意味もなく読みにくかったりすることはありません。保証いたします。

 それにね、わかるんですよ。
 私みたいな司書には、触ってみるだけで、これを書いた人がどれくらいエネルギーを注いだか、ってことが。
 ……半分は法螺です。そう思ってください。
 
 え? 他にどんなところがオススメ?
 そうですねぇ。キャラクターが生き生きと書かれているところでしょうか。
 これは書く存在のスタイルにもよるんですが、どれくらいキャラクターの存在を大切に扱っているというのは、ものによってかなり差があるんですよ。中には人形のようにお書きになる方もいらっしゃいますし。

 え? 楽しそうに言ったのが不思議ですか?
 でも、人形のように書いてはいけないなんていうルールはありませんよ。

 ちょっと横道にそれますが。自分の書く喜びを第一に考える人もいれば、誰かに読んでもらうことを第一に考える人もいます。でもそれは誰かに強制されることではありません。だから、人によって必要とするアドバイスは全く違うと思ってるんです。

 例えば前に、この『シンデレラロード・オブ・ザ・タイガー』をお読みになった方がいらっしゃいました。
 よくできていて面白かったけど、掛け合いが多く、場面場面で膨らんでいて、テンポが緩くなっている気もしたとか。
 でも、それが正しいアドバイスになるかどうかは、実のところ未知数です。
 膨らんだ場面というのは、おそらくお書きになった作者さんが楽しんで書いた部分に違いありません。
 つまり、読んだその人のために作品の「質」を上げるというのは、書く側の喜びをいくつか削ってしまうことに繋がるわけです。
 こうした葛藤を前にした時、書く人の意識によって、受け取るべき意見が変わってくるということですね。
 まぁ、だからといって、両極端な意見もどうかと思いますけど。生きていくにはバランスが大事です。

 話がだいぶそれてしまったので、少しあらすじをサービスしてさしあげましょう。






 まさしくシンデレラに出てくる魔女のごとく、星のために協力する命蓮寺+α。
 しかし、いざお姫様に変わった彼女を待ち受けるのは、とてつもない存在だった……!






 モンスターの紹介のようになってしまいましたが、でも本当に化け物のような御方が出てくるんです。必見です。本の中ではコミカルで楽しい役回りですし、『彼女』の存在が、このSSの後半部を引き立てているといっても過言ではないと思いますけど、現実世界にいたら、うっとうしいことこの上ないでしょうね。

 ええ。お察しの通り、オリジナルキャラクター、いわゆるオリキャラと言われている部類です。
 難しいですけど、使い方次第では抜群の効果を生んでくれる存在ですね。
 この作品、ただ長いだけではなく、しっかりプロットを練って書いたのでしょうし、オリジナルキャラという難しいものも料理し、まとめあげた情熱。私が貴方に勧めようと思ったのは、そんな理由からです。

 実はこれを書いた方は、最初にこの図書館に寄贈した時も、250ページを超える作品を残しているんですよ。デビューで長編に挑戦するだけではなく、なおも長編に挑戦するという姿勢は凄いですよね。これからも自由な発想で作品を書いてもらいたいものですが……。

 ああっと、説明が長くなってしまいましたね。
 まとめてみますと、この作品が気に入りそうなのは、

 ①命蓮寺が大好きで
 ②特にナズ星がお好きで
 ③日常を描いたほのぼのコメディがお気に入りで
 ④みんなが頑張って何かを成し遂げようとするのもお気にいりで
 ⑤アクの強いオリキャラに制裁したくなるような人

 でしょうかねぇ。
 分かりにくかったかもしれませんけど、ご勘弁を。

 おっと、私は仕事が残っていますので、この辺で失礼させていただきます。
 もちろん、まだ自由に見ていただいて構いません。
 そちらの本をお借りになる場合は、カウンターへお越しください。

 ああ……そうそう。その本、少し前に借りていった妖怪さんがいましたよ。
 
 頭に蓮のような飾りを載せた、金と黒の縞々カラーの髪の女性です。
 顔はキリッとしているんですが、話してみると丁寧で物腰が柔らかくて、素敵な人でした。 
 この本を読んで嬉しそうにしてましたねぇ。
 でも忘れ物もしていったので、意外と、うっかり者なのかもしれませんね。いつ取りに来るのかなぁ。

 え? どこかで見たことがある? さて、私は存じませんねぇ。 

 ……ふふ。それでは、ごゆっくりどうぞ。








 本を開く
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

 

Author: 
 
このはずくは共通世界観、木葉梟は一度限りの世界観という風に、HNを使い分けて東方創想話にSSを投稿しています。
ここでは他の方々のSSや、自作SSの裏話などを紹介しております。あとは、軽い後日談とか。よろしくです。

最新記事

今日は何の日?教えて慧音先生

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。